空(くう)の空(くう)(10月5日)

五七五の俳句の最後に「それにつけても 金の欲しさよ」と付けると、どんな名句も情けなくなるというお笑いのネタがあります。旧約聖書「伝道の書」にも、これに通じるようなフレーズがあります。

「伝道の書」は、新共同訳聖書では「コヘレトの言葉」という書名になっています。コヘレトとは伝道者という意味ですが、中身は伝道者らしからぬ虚無的言葉が散りばめられています。たとえば、1章 2節にはこう記されています。「コヘレトは言う。なんという空しさなんという空しさ、すべては空しい」(新共同訳)。つまり、「何をやっても変わらない」「どうせムダだ」といった思いが語られているのです。

しかし、この書が聖書に取り入れられていること自体が素晴らしいのです。人間の陰の部分や虚無的思い、あってはならないはずの後ろ向き否定的部分。これらを抹消するのではなく、むしろ「そのような部分も人間の一部であり、人生の現実である」と神がご存じであることを示しているのです。何をやっても気力が出ず、「なんという空しさ」と心の中でつぶやくあなたをも、神は見捨てず、受け止めてくださっています。

無理やり元気を出そうとせず、まず、その神がいらっしゃることを心に覚えましょう。神は、時満ちて、御心の場所へとあなたを押し出してくださいます。

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