上甲(じょうこう)氏は働きに行き詰まり、答えを求めてマザー・テレサを訪ねました。当時、インドのカルカッタ(現在のコルカタ)では200万人が路上生活者で、至る所に行き倒れた人がいました。全身膿だらけの人、ウジ虫のわいている人……とても近寄れません。マザーたちは、一番死に近い人から順番に抱きかかえ、「死を待つ人の家」に連れて行き、体をきれいに洗い、温かいスープを与え、見送るのです。最後の瞬間は人間らしく、と願ってのことでした。
上甲氏はマザーに、「あなたがたは、なぜあの汚い物乞いを抱きかかえられるのですか」と尋ねました。マザーは即座に「彼らは物乞いではありません」とおっしゃるので、驚いて「では何ですか」と聞くと、「イエス・キリストです」と答えたのです。「イエス・キリストは、この仕事をしているあなたが本物かどうか、あなたが本気かどうかを確かめるために、あなたの一番受け入れ難い姿であなたの前に現れるのです」。上甲氏は目からウロコが落ち、その瞬間、彼が働く松下政経塾で「辞めてほしい」と思っている塾生が、実は、イエス・キリストであることに思い至ったのです。
他人や状況ではなく、自分自身が変えられてこそ、人生の本道です。毎日の生活で、これさえなければ、この人さえいなければ、という状況の中にキリストを見いだす歩みを、今週もしてまいりましょう。