2021年6月の霊想

光と影(6月6日)

著名なフランスの映画監督、フランソワ・トリュフォーがイタリアを訪ねた時、記者から「あなたはカトリック信者ですね。本山があるイタリアに、なぜ、これほど多くのスリや泥棒がいるのでしょうか」と問われました。トリュフォー氏は「映画ではなく、絵の場合でお話ししましょう。光を表現する時はどのように描きますか」。聞かれた記者は「光を表すには影を描きます」。そこでトリュフォー氏は「そうです。影があるのは光があるからです」と答えました。

人生で影のように思えるものの背後に、必ず光があります。光と影、これは相反する別のものではなく、一つの世界であり、影を集めて光が生まれるのではなく、光が影をもたらすのです。強い陽ざしがあるからこそ木陰ができ、そこで人々が憩えるのです。

光と影。それは、二つのものではなく一つの世界、一元の世界です。困難や苦難があるということは、同時に、希望や救いがあるということに他なりません。

今週も、あなたの生活の中でこの一元をしっかりと見出し、味わい、他者に伝えましょう。

「あなたには、やみも暗くはなく、夜も昼のように輝きます。あなたには、やみも光も異なることはありません。」(詩篇139:12)

ローマ帝国を支えたもの(6月13日)

塩野七生さんは、名著『ローマ人の物語』の冒頭で、「知力ではギリシア人に劣り、体力ではケルト(ガリア)やゲルマンの人々に劣り、技術力ではエトルリア人に劣り、経済力ではカルタゴ人に劣るローマ人だけが、なぜ、巨大な世界帝国を繁栄させることができたのか」と記しています。その理由は「寛容」です。「寛容」という言葉を、あなたはどのように解釈なさいますか。

人生で多くの欠けを見いだす時、それを補って余りあるものは、「すべてのこと相働きて益となる」(ローマ8・28)の興譲教会のスピリットです。教会に集うお一人びとりにも、このみ言葉が生活の隅々に浸透していることは、何と大きな恵みでしょう。

私たちは、弱いよりも強く、少ないよりも多く、貧しいよりも豊かに、病気であるよりも元気に、と二つに分けがちですが、すべてのものは主の御手の中にあり、すべては最善です。あなたの人生の下には見えざる永遠の御手(申命記33・27)があることを、今週も、祈りの中で強化していきましょう。それはあなただけの恵みではなく、まわりの人々にも大きな助けとなるからです。人生の試練、困難を通して、神様に信頼する信仰が培われ、恵みから恵み、栄光から栄光へと前進できるのです。

未来への遺産(6月20日)

アメリカの著名な大学の一つ、スタンフォード大学の正式名称は、リーランド・スタンフォード・ジュニア大学です。著名人の名前を冠したのではなく、16歳になる前に病気で亡くなった、スタンフォード夫妻の息子の名前です。スタンフォード夫妻は、一人息子の死に打ちひしがれましたが、「これからカリフォルニアの子どもたちは、皆、自分の子どもたちとなる」との思いで、息子の名を冠した大学を創りました。

1891年、大学創設式で、ジェーン夫人は最初のスピーチをしました。感無量のあまり、途中でスピーチができないほどでしたが、次のように残されています。

「あなたがたの人生が真に誠実なものであることを願います。それは偉大な富や名声を得るために邁進するという意味ではなく、良心的な働き者であり、他者を助け、励ましを必要としている人々のために生きる……」。

その後、スタンフォード大学は幾多の試練に遭遇しましたが、今日も世界最高峰の学舎となっています。ご夫妻の「人生、何のために生きるのか」の理念は、聖書の真髄である「神の愛を基として生きること」が土台となっています。息子さんの死は、まさに、イエス・キリストの十字架の死を深く意味していることは、すでにおわかりの通りです。

最善の答えが必ずある(6月27日)

「無茶ですよ……医者のくせに、障害者を公衆の前に引き出して、サーカスのような見せ物をやろうというのですか。」

(佐藤二郎著・『1960年のパラリンピック』より)

 

パラリンピックの開催に当たって、先のような大反対がありました。「サーカスのような見せ物」という表現をあなたはどのように感じますか。

人間は、誰もが皆不十分で、何らかの欠けを持っています。しかし、それゆえに、人生が何であるかを知り、暗やみの向こうには光あり、すなわち、すべてが最善になる答えが用意されていることを思い描くことができます。試練・困難と向き合い、挑戦することこそ、人生の目的です。

八方塞がりになり、失意の時には、「こんな私をサーカスの見せ物に」と消極的にとらえがちですが、「この試練があったからこそ今がある」と、神様がくださった宝の確認こそ、人生の醍醐味です。

宿題のない学生生活がないように、あなた自身に与えられた障害(宿題)を今日もしっかりこなし、一つひとつの宿題に果敢に取り組み、主を見上げつつ、人生のランナーとして前進いたしましょう。

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